ソフト会社って何なん?(第3話) 提案書は誰のため?

「提案書」は誰のために作られるのか?

提案書を持って営業マンがやって来た

「提案書ができました。」

営業マンは、現状調査から10日ほど経った頃、再び会社を訪れます。

「御社の現状を分析した結果をもとに、ご提案をさせていただきます。」

そう言って、一冊の提案書を差し出します。

おそらく、多くの経営者にとって、ソフト会社から提案書を受け取る機会は、そう多くないでしょう。

ページをめくると、

業務フロー、DX、標準化、クラウド、最適化、効率化……。

専門用語が並び、グラフや図表も数多く掲載されています。

「ここまで分析してくれたのか。」

「専門家がここまで考えてくれたなら安心だ。」

そう感じる方も少なくないでしょう。

しかし、私はいつも一つだけ考えていただきたいことがあります。

その提案書は、本当にあなたの会社のために作られているのでしょうか。

それとも、システムを販売するために作られた提案書なのでしょうか。


提案書の目的は?

提案書とは、何のために作られるのでしょうか。

経営者の多くは、

「自社の課題を分析し、最適な改善策を提案してくれる資料」

だと思われているかもしれません。

もちろん、その役割もあります。

しかし、それだけではありません。

ソフト会社にとって提案書は、自社のシステムや開発サービスを提案し、

お客様に導入を検討していただくための営業資料でもあります。

つまり、

「お客様の課題を解決するための資料」であると同時に、

「自社のシステムやサービスを提案するための営業資料」でもあるのです。

そのため、提案書には、

「この機能もあると便利です。」

「こちらの業務もシステム化できます。」

「将来的には、この業務も一緒に管理できます。」

といった内容が盛り込まれることがあります。

もちろん、それらが本当に必要な提案であれば問題はありません。

しかし、お客様がシステムに詳しくない場合、その必要性を判断することは簡単ではありません。

専門用語や業界用語、横文字が多く並ぶことで、「すごい提案だ」と感じる一方、

一つひとつの内容を冷静に検討する機会を失ってしまうこともあります。

私は、30年以上この業界で提案書を作り、お客様へ説明してきました。

その経験から思うのは、

提案書は、書かれている内容をそのまま受け入れるものではなく、

「なぜ、この提案が必要なのか」を一つひとつ確認しながら読む資料だということです。

では、その提案は、本当に自社に必要なのでしょうか。


本当に自社に必要なのか?

提案書を見るとき、私が経営者の方に最も意識してほしいことがあります。

それは、

「この提案は、本当に自社に必要なのか。」

という視点です。

ソフト会社は、お客様の課題を解決することが仕事です。

しかし、それと同時に、会社である以上、利益を上げ、社員を育て、

事業を継続していかなければなりません。

例えば、

新しい技術を実際の開発現場で使い、実績を作りたい。

若手SEに経験を積ませたい。

将来の保守契約につなげたい。

開発チームの稼働を安定させたい。

このような、ソフト会社側の事情も存在します。

そのため、提案書には、お客様の課題を解決するための内容だけでなく、

「この機能も追加できます。」

「この業務も一緒にシステム化できます。」

というように、提案の範囲が少しずつ広がっていくことがあります。

もちろん、それが本当に必要なものであれば問題はありません。

しかし、経営者が一番大切にしなければならないのは、

「ソフト会社が提案したいこと」ではなく、「自社が本当に必要としていること」です。

私はこれまで、多くのシステム導入を見てきました。

その中で感じるのは、最初は小さな改善を目的としていたはずが、提案内容が少しずつ広がり、

結果として予算も開発期間も大きくなってしまったケースが少なくなかったということです。

だからこそ、提案書を読むときには、次の点を一つひとつ確認していただきたいのです。

  • この機能は、本当に必要なのか。
  • 将来追加する方法ではいけないのか。
  • 最新技術を採用する理由は何なのか。
  • 導入後、自社で運用できるのか。
  • 投資に見合う効果は期待できるのか。
  • 自社の経営計画に合っているのか。

提案書は、ソフト会社の計画どおりに進めるための資料ではありません。

経営者が、自社にとって最適な投資かどうかを判断するための資料なのです。


「この部分を、一言で説明してください。」

提案書に書かれている内容が、すべて不要だということではありません。

大切なのは、専門用語や立派な図表に圧倒されることなく、

「これは本当に自社の課題を解決するために必要なものなのか。」

と、一つひとつ確認することです。

ソフト会社には、ソフト会社の事情があります。

しかし、経営者には、自社の事業と社員、そして会社の資金を守る責任があります。

だからこそ、提案書を受け取ったときには、そのまま賛同するのではなく、

必要なものと、今は必要でないものを切り分ける。

その視点を持って、投資を判断していただきたいと思います。

そして最後に、私から一つだけお伝えしたいことがあります。

分からないことは、遠慮せず質問してください。

そのとき、私がお勧めしたい質問があります。

「この部分を、一言で説明してください。」

という質問です。

ここでいう「一言」とは、一呼吸で、息継ぎをせずに説明できる程度の短さです。

本当に内容を理解している人であれば、難しい専門用語を並べる前に、本質を短い言葉で説明できます。

一方で、提案内容が曖昧だったり、説明する本人が十分に理解できていなかったりすると、説明は長くなり、

専門用語が次々と並ぶ傾向があります。

もちろん、複雑な内容を正確に説明するためには、ある程度の長さが必要になることもあります。

しかし、最初の一言で本質を分かりやすく伝えられるかどうかは、その提案を理解しているかを見極める

一つの目安になります。

その一言で納得できれば、その提案は経営者にも理解できるレベルまで整理されている可能性が高いでしょう。

これが、私が現在まで38年間の経験の中で最も大切だと感じていることです。

「分からないまま進めない。」

システム導入で一番高くつくのは、導入してから「こんなはずではなかった」と気付くことです。

だからこそ、導入前に「分からない」を残さないことが、成功への第一歩だと私は考えています。

ソフト会社に任せることと、経営判断まで任せることは違います。

経営判断をするのは、最後まで経営者自身です。


次回、第4話では、

提案書を読んで納得すると、次に提示されるのが「見積書」です。

しかし、その見積書にも、経営者が知っておくべきポイントがあります。

「見積書はどう読めばよいのか。」

現場で30年以上見てきた経験をもとに、お話ししたいと思います。

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