ソフト会社って何なん?(第5話)ハードウェアの選び方
中小企業が考えるハードウェア選び
「スモールスタート」の考え方
第4話では、「見積書をどう読む」についてお話ししました。
今回からは、その見積書を構成する「ハードウェア」「ソフトウェア開発」「保守・サポート」について、
数回に分けて、38年間システム開発の現場で見てきた経験をもとにお話ししたいと思います。
最初に、このシリーズの考え方をお伝えしておきます。
今回お話しする内容は、数百万円、数千万円という設備投資を無理なく行える企業を対象にしたものでは
ありません。
そのような企業であれば、将来を見据えて余裕のある設備や機能を最初から導入するという考え方も、
一つの正しい経営判断です。
今回お話しする対象は、一つひとつの投資判断が会社の経営に大きく影響する中小企業の経営者の方です。
私が38年間の現場経験を通して大切だと考えているのは、
「スモールスタートで始め、会社とともに育てていく。」
という考え方です。
最初から完璧なシステムを目指すのではなく、まずは必要最小限の投資で、今の会社に合ったシステムを
導入する。
そして、会社の成長や業務の変化に合わせて、本当に必要になったときに設備や機能を追加していく。
私は、それが中小企業にとって最も現実的で、失敗の少ないシステム導入だと考えています。
これからお話しする内容も、すべてこの考え方を前提として進めていきます。
クラウドか、自社で設備を購入するか
ハードウェアを考えるとき、最初に直面することがあります。
それは、
Amazon(アマゾン)やMicrosoft(マイクロソフト)などが提供しているコンピューターを借りて、
自社のシステムを動かすのか。
それとも、
自社でサーバーなどの設備を購入し、自社でシステムを運用するのか。
ということです。
前者が一般的に「クラウド」、後者が「オンプレミス」と呼ばれる方法です。
この記事では、後者を分かりやすく「自社で設備を購入する方法」と表現します。
クラウドでは、コンピューターを自社で所有するのではなく、必要な期間だけ借りて利用します。
そのため、高価なサーバーなどを購入する必要がなく、初期投資を抑えられるというメリットがあります。
一方、自社で設備を購入する場合は、最初にまとまった設備投資が必要になります。
そのため、見積書を見ると、
「初期費用が安いクラウドの方がいいのではないか。」
そう感じる経営者も少なくありません。
もちろん、それも一つの考え方です。
しかし、ここで一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。
初期費用だけで判断してはいけない
クラウドは、設備を購入するのではなく、設備を借りる仕組みです。
そのため、多くの場合、毎月利用料が発生します。
また、利用するサービスや容量が増えれば、それに応じて毎月の費用も増えていくことがあります。
イメージとしては、携帯電話の料金に少し似ています。
最初は安く感じても、利用するサービスが増えれば、毎月の支払いも少しずつ増えていきます。
一方、自社で設備を購入する場合は、最初の投資は大きくなりますが、その設備は自社の資産になります。
つまり、
「最初に買うのか。」
それとも、
「毎月借り続けるのか。」
という違いでもあります。
だからこそ、初期費用だけで判断してはいけません。
大切なのは、
「5年後、10年後まで含めて、自社に合った方法なのか。」
という視点です。
ソフト会社にも提案する理由がある
ここで、経営者として知っておいていただきたいことがあります。
ソフト会社は、全てではありませんが、ハードウェアを販売することを主としている会社ではありません。
本業は、システムを開発し、運用を支援することです。
つまり、人が動いて価値を生み出す仕事が本業です。
そのため、自社で設備を購入する場合は、サーバーなどの購入費の多くがメーカーや販売会社へ支払われます。
一方、クラウドでは、環境構築や設定、導入支援、運用サポートなど、ソフト会社が担当する作業の割合が
増えることがあります。
これは、どちらが良い悪いという話ではありません。
ソフト会社には、そのような事業の成り立ちがあるということです。
だからといって、クラウドを勧めることが間違いだという意味ではありません。
大切なのは、その提案理由を経営者自身が理解し、納得したうえで判断することです。
だからこそ、経営者には、
「なぜクラウドを提案するのですか。」
あるいは、
「なぜ自社で設備を購入する方法を提案するのですか。」
その理由を一度確認していただきたいと思います。
経営者が確認しておきたいこと
方式を選ぶときは、今の金額だけではなく、その先まで考えてください。
例えば、
・将来、システムを追加・変更するときはどうなりますか。
・クラウドと自社設備、それぞれのメリット・デメリットは何ですか。
・他の会社へ保守を依頼できますか。
・この構成は今必要だからですか。それとも将来まで見据えた提案ですか。
こうしたことを確認しておくことで、
導入後に、
「そんな話は聞いていなかった。」
という事態を防ぐことができます。
見積書は、
「いくらかかるか。」
を確認する資料ではありません。
「会社の将来」と「今の経営状況」の両方を考えたとき、本当に適切な投資なのか。
それを判断するための資料なのです。
このシリーズでは、「これが正解です」とお伝えするつもりはありません。
経営者が自ら判断するための「考え方」や「判断材料」を、38年間の現場経験をもとにお伝えしていきたいと
思います。
その中から、自社に合うものを取捨選択し、システム導入やIT投資の判断に役立てていただければ幸いです。
次回予告
次回、第6話では、
「その設備、本当に必要ですか?」
高性能サーバーや冗長化、RAIDなど、見積書には設備や技術に関する難しい専門用語が並びます。
しかし、本当に大切なのは、その設備や性能が、今の会社に本当に必要なのかという視点です。
38年間の現場経験をもとに、経営者がサーバーの見積書を判断するときに知っておきたいポイントを、
分かりやすくお話ししたいと思います。
※本記事は、筆者が38年間システム開発の現場で経験した内容や考え方をもとに執筆しています。
すべての企業や案件に当てはまるものではなく、一つの考え方として参考にしていただければ幸いです。